平成の青

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2018年08月07日

愛しいリズム

愛しいリズム

亜熱帯のように蒸した金曜夜の空気のなかで、六本木道りにつらなるタクシーのテールランプが揺れている。そんな光景を横目に、僕はアークヒルズへの道を急いだ。
今夜はサントリーホールに隣接するカフェで、中学同級生のライブがあるのだ。

汗ばみながらなんとか10分遅れで会場に着くと、ステージ上には懐かしい顔があった。

カフェ中の人びとの視線をその身に集めている彼女の名前は永山マキ
この4文字は控えめにいっても、文京×中の僕らの代では、世の中に一番浸透している名前だろう。

もうひとりの同級生、ともえさんが僕に手をふり、僕は窓際の席に座った。
となりにはそのともえさんの息子、まつげの長い、ちいさなイケメンがちょこんと腰かけている。

先日きみにお会いしたときは、僕のともだちの保育士さんにだっこされて、おむつで膨らんだおしりをとんとん叩かれてうっとりしていたのにね。
いつのまにきみは、僕と同じ椅子に腰掛けられるようになったんだい?

同級生の息子くんは、しばらくはお絵描きしたりしてじっとしてたけど、やっぱりそのおしりをずっとは椅子に預けてはいられない模様。

けいくんは同じテーブルに相席で座っていた美人親娘の女の子を連れ立って、お店前の広場へとフリスビーをしに行ってしまった。

ステージ上ではアップテンポな曲、バラード、マキちゃんにとって唯一無二の相棒、イシイタカユキさんとの絶妙な掛け合いのMC、いっしょに歌う曲へと続く。
みんなで盛り上がって、しんみりして、笑って、歌って♪そんな合間にも、ときどき振り返って、フリスビーをする親子を確認して。いち観客とはいえ、これはなかなかに僕も忙しいぞ。

愛しいリズム
愛しいリズム
愛しいリズム

そんなふうに視線をあちらこちらへ動かしながらも、ずっと心に映っていたのは、マキちゃんの中学生、高校生のころの姿だった。

少なくとも僕の知っているマキちゃんは、目の前にいる、歌いながら床に倒れこんだり、ステージを飛び出して一身に喝采を浴びている女の子ではなかった。
いつも吹奏楽部でがんばってるけど、あまり目立たない。なんとなくうつむき加減な印象の、そんな女の子。

自己主張というものから、いちばん縁遠い感じだった彼女がこうも変わるのだから、人生というのはやっぱりおもしろい。
そんな文章を頭で書きながらも、僕はマキちゃんとは中学では一度も同じクラスになったことがなかったし、そこまで面識はなかったんだなぁと気づく。

でもたまたま僕が仲よかった女の子と、彼女が仲良しだったから、その縁で高校一年生のときに何度か遊んだことがあるのだ。
ライブ翌日、マキちゃんとお茶をして、あれこれと昔の話をしていると、彼女はその若かりしころを「暗黒時代」と表現していた。

僕も時を同じくして、その当時はある意味では人生でもっとも辛い時期のひとつだった。まさに心そこにあらずの時代だったから、その頃の記憶はあいまいだ。
よく覚えてることはよく思い出していることであり、覚えていないことはその逆なのだ。

でも、文字通り全身から声を出して歌う彼女が、これだけ人の心を掴めるのは、そのうまく自分というものを表現できなかった「暗黒時代」と、無縁ではないだろう。
すくなくとも僕はそう確信してる。

だって彼女の歌う光は、闇の深さを知っている人の光だから。

愛しいリズム

さて素敵な夜はなおも続き、いよいよ『愛しいリズム』という曲で最高潮を迎える。
沸き起こった、おおきな手拍子のなかで

ー終わりのある あなたのリズムを 隣で感じる幸せな偶然ー

そんな素敵な歌詞が、会場中の人々の心に響いていた。

愛しいリズム
最終回のうた iima(永山マキ×イシイタカユキ)
絵本のお話がおしまいに近づくと(おはなしが終わってしまうことが寂しくて)必ず泣いちゃう、マキちゃんの娘さんに発想を得た『最終回のうた』

KOO-KI白川東一氏によるアニメーション『最終回のうた』は、「宮城・仙台アニメーショングランプリ2018」のグランプリを受賞されました。おめでとうございます!!

音楽も映像もとても素敵な作品です。みなさんもぜひ、ご覧になってください。
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